ちんもくの日記

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映画『バンコクナイツ』を観る前にテンション上げとこう

バンコクの娼婦にライトをあてた映画。」
半年ほど前、元職場の同僚にして無類の映画狂であるEさんに、そんな映画が上映されるという情報を聞いた。
「タイ制作の映画ですか?」*1
そんな頓珍漢なことを聞き返した私であったが、なんでも、”自分たちが観たい映画を、自分たちの手で”という理念のもと活動している日本の映像製作集団「空族」による、自主映画だという。

私としては、一年ほど前はじめての海外旅行として訪れたのがタイだったので、なんとなく興味を抱いており公開されたら観にいってみようと決めていた。

その『バンコクナイツ』がまもなく公開される。


【関連本を買ってみる】
滞在期間はトータルで45日間くらいだろうか。多いとも少ないとも言えない。
バンコクを我が物顔で語るにはまだ若い。かといって、魅力をまったく知らないでもない。はて、どうしたものか。
万が一、元同僚にかの街のあれこれを尋ねられた場合、私は得意げになってもよいものだろうか。映画の鑑賞後に、「あの街の湿度、そして欲望の臭い、あの独特な臭いが思い出されま…」なんて調子に乗っていいものかどうか。逆に、「あんなエロいスポットあるんすね」などとシラを切り通していいものだろうか。心当たりがあるにもかかわらず。
私とバンコクの関係性を決めかね、頭を悩ましていたのだが、結果、付き合いたての彼女くらいの距離に位置付けることを決めた。

彼女は愛さなければならない。私はウッキウキだ。私は今とても幸せな状態だ。
そして新しい彼女となれば、とりあえず相手のことをもっとよく知りたいと思うが普通だ。
そこで、映画の関連本を購入することにより、バンコクに近づいてみることにした。

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まずは、タイという国の簡単な歴史をまとめ上げたもの。
国の誕生以前から記述されており、あらゆる民族の対立、そして滅亡まで網羅されている。こういったの通史は、グローバルにおけるタイという国を把握できるのもさることながら、土地としてその国をイメージしやすくなる。なんとなく立体的に浮かび上がってくる。どのあたりが都会で、どんな用途の建物が多いのか。どのあたりが田舎で、土には何が植わってるか。
例えるならば、彼女のシルエット、輪郭だろうか。やさしく服を脱がせて、体のへこみふくらみを確認するように、異国の地が丸裸にされていく。ちなみにタイの国の形は、一般にゾウの頭部に例えられる。

二冊目はバンコクの天使たち」といって、まさに『バンコクナイツ』の題材である、娼婦たちを追った本。
もう30年以上も前に書かれたもので、内容が果たしてどれほど通用するのかどうか疑問ではあるが、映画を観終わった後、現代と比較できるかもしれないので読んでおく。
今読んでる途中だけど、私が以前見たような、あっけらかんとしていて明るい娼婦が何人も出てくる。
バンコクの娼婦はあんまり深刻な感じがしなかったのがとても印象に残っている。それはよく飲みに行った、ゴーゴーバー*2という場所の特殊性もあるのだろうが、誤解を恐れずに言えば、生活費を稼ぐというより、仕事仲間や友人とその場の喧騒を楽しんでいるという感じ。
日本の風俗の雰囲気はどちらかというとネガティブな印象で、親や友人にも言えなかったりする。でもバンコクでは、そんな風俗で働いたお金で家族を養っており、その家族も娘が何をして稼いでいるか、薄々知っているという状況。
私の相手をしてくれた女の子は、子供が二人いて田舎の母に面倒を見てもらっているとのことだった。「旦那さんもこの仕事知ってるの」と聞くと、「彼は他の女とどこかへ行ったわ」と言った。

性産業がこれほどまでに日常化しているなかで、彼女たちは何を考えその仕事をしているのだろう。
主張があるにせよ無いにせよ、意思を表明しにくい”水商売”という題材を扱ったことで、やはり『バンコクナイツ』は観賞の価値があるように思う。

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ゴーゴーバー


三冊目は梁石日闇の子供たち
東南アジアにおける人身売買、幼児売買春の実態をテーマにした小説。
タイトルにもある通り、社会の闇の方からタイを見てみたいと思って手に取ってみた。15年ほど前に書かれ、映画にもなっているからそれなりに知名度もあると思うので今さら騒ぎ立てることはしないが、これはほんとに多くの人に読まれるべき小説だと思った。貧富の差によって生じる犠牲者がどれほどの苦痛を感じているか。その苦痛を肩代わりしてあげることができればいいのにと本気で思った。
またこの日記とは別に更新しようと思っているけれど、とにかくバンコクナイツに興味がある人、または観終わってバンコクという都市に興味を抱いた人は読んでみたらおもしろいんじゃないかなと思う。

ところで、私の住む田舎にはあの映画はいつ来るのだろうか。
でも映画の予習って思えばあんまりしたことないかもしれない。
今度得た情報を交えながら鑑賞後は感想を書いてみたい。


映画『バンコクナイツ』予告編



物語 タイの歴史 微笑みの国の真実 (中公新書)

物語 タイの歴史 微笑みの国の真実 (中公新書)

 

 

バンコクの天使たち―タイの売春地帯を行く (1985年)

バンコクの天使たち―タイの売春地帯を行く (1985年)

 

 

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

 

 

*1:タイでは映画の始まりに「国王賛歌」が流れ、全員起立して斉唱し、スクリーンに現れる国王に敬意を表する。そのためなんとなくタイでは性が絡んだ映画はご法度のような気がした

*2:店内で女の子が何十人も踊っていて、客はドリンクを注文しながら好みの女の子と話したりできる。気に入ればお持ち帰る。